| |
12日付の朝日で気になる記事を見つけた。
3年前に財政破綻し再建途上にある夕張で、市内3中学校を統合した夕張中学校が今年開校した。 東京23区より広い市域にただ1校の中学としてスタートしたのである。 カフェからは車で1時間ほどの距離だ。
そこの生徒達が『吹奏楽をやりたい!』と10数人集まったのに『楽器が全然足りない』と訴えていた。 当然夕張市に頼ることはできない、という。
中学に入ったらテニスラケットを握るはずだった私はひょんなことから入学式の日にアルトサックスを抱えさせられた。 以後10年間ひたすら吹奏楽にのめり込んだ過去が私にはある。
話が展開し過ぎて恐縮だが、4年前に死んだ眞知子(我が家の愛犬アモのパピーウォーカーでもあった友人)から私はテナーサックスを託されていた。 眞知子の旦那Y(女系家族の中で愛されたほんと優しい男。私の酒飲み仲間)はその前年に倒れ、今なお意識がないまま眠り続けているのだが、託されたテナーサックスは彼の愛器であった。
「長崎さんに吹いてもらったら絶対喜ぶよ」 眞知子からそう言われて託された楽器である。 だが、私の寝室に置いたものの、奏でるのは年に1〜2回しかなかった。
新聞を読んだ夜、私は久しぶりにテナーサックスに息を通した。 音程は完璧だったが低音のCがうまく出ない。 タンポ(重要な一部品)のチェックをしたが問題は無さそうで、そのまま吹き続けると問題は解決され、終いにはその音色がとても気に入ってしまった。
『吹き続けてこそ、この音が出る』 『このテナーサックスに再び命が宿るチャンスが来たのだ』と私は感じた。
中学生だから初めてサックスに出会うはずだ。 ろくな音も出せないに違いない。 雑な扱いをしてリード(音を出すための吹き口の竹の一種)を割ってしまうことだろう。
『40年以上前に私がやったあの頃と同じことを、この楽器と格闘する生徒が現れるかもしれない』 そう考えたら、私はニカーッとした顔になり、眞知子から託されたこのテナーは夕張中学校へ届けるべきだと心に決めた。
「すっごい!ピッカピカに光ってますね。ありがとうございます。で、これは貸して?それともいただけるんですか?」と興奮気味の先生。
差し上げますよ。存分に使ってくださいね。
夢みたいなことをひとつ言わせていただければ、意識のないまま今も眠り続けているYが、このテナーサックスの音色を聞いていつの日か目覚めてくれる奇跡が起きること、かな。
|
|
|